メタンプルーム

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メタンプルーム(英: methane plume)*1 とは、海中をの泡のように浮上するメタンハイドレート。通常、海底から湧き出たメタンガスは直ぐに海水に溶けるが、一定の条件下(低温、高圧)ではハイドレート化して浮上する。近年、地球環境の変動要因として世界で研究されているが、資源としての研究は日本の極一部の研究者のみ。メタンプルームは日本では日本海で多く見られ、高さはスカイツリー程の物もあるが、疎らであるため、資源としては一本で数軒の民家が賄える程度。

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メタンプルーム画像

ソナーの画像上は、大量の泡のように見えるが、実物は、直径5mm程のメタンハイドレートの粒が1立方メートルあたり2.6個程度で、非常に疎ら(青山2009)。プルームの高さはメタンの湧水量と関係なく、海底の水深に依存する。日本海では、水深300m付近でハイドレートの安定領域から外れて、急激に海水に溶解して消滅するので、ブルームは高くても、海底の水深マイナス300m程度。

*1:プルーム

プルーム(Plume;柱)は水中音響機器等による画像上での呼称。実物はシープ(Seep;染み出る、漏れ出る)と呼ばれ、非常に少ないというニュアンス。

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メタンブルーム動画






オホーツクメタンプルーム

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オホーツク海のメタンハイドレートとプルーム


上越沖メタンブルーム


  1. 上越沖(海鷹開脚、上越海丘)のマウンド(チムニー)は計5カ所
  2. プルームはマウンド上に集中しており合計40本
  3. プルーム(シープ)一本の年間メタン湧出量は数トン程度
  4. プルームの湧出量、位置は刻々変化

湧出口:40本、マウンド上で移動

メタンプルームの観測と解析


「海鷹海脚の2カ所(北部と中央)と上越海丘の3カ所(北部,中央,南部)で5年間の間に合計 40 本超のメタンプルームが観測された。プルームの位置は一定ではないが大きく移動するものでもない、いずれもマウンドに集中しており‥」

メタンプルームの湧出量は年間メタン数トン

メタンプルーム実験
  • 試算: 2.1トン 青山/地学雑誌2009 
    「 自然現象のプルームの 1 年間の湧出量を 試算し, 
     半分がガス,半分がハイドレートと仮定し た場合,3 × 10⁹ グラム(= 131400mol )」(131400x16.04= 2,107,656)
  • 実験: 1.7トン 青山/AGU2013、、2014、2017
    「直径20cmの漏斗でメタンの固体300ml を643秒で回収」
    (300/643/1,000x31536000x164/22.4x16.04=1,727,893)
  • 実験: 1〜9トン 松本、青山/地学雑誌2020
    「メタンバブルを直接捕集する方法により、メタンプルームの源となる海底メタンシープ(湧出)の湧出量見積もりを行なったが、得られた湧出量は年間1〜9トン程度であった。」(実験は2006、2007に実施)
    • 「 ただしここでいうメタンプルームとは直径 2 m 高さ 600 m の仮想的なプルーム(青山・松本, 2009)である。魚群探知機で観測される自然界のプルームは複数のメタンシープからのバブルを集めている可能性があり,この点については今後の検討が待たれる。」

メタンプルームは資源ではない

湧出量が圧倒的に少なく、EPRは1以下

 プルームのメタン湧出量(1〜9トン)は、化石燃料の原始資源量と同じで、どんなに技術が進歩してもこれ以上は回収できません。そのエネルギー量は太陽光と同程度。また、エネルギー収支比は1以下で、例えば、プルームで1のエネルギーを得るには、石炭を1以上の燃やさなければなりません。回収すればするほど、輸入エネルギーとCO2が増える最悪の自前資源です。

エネルギー量(直径10m、5トン、年間)
  • プルーム:277,500MJ(55,500MJx5)
  • 太陽光 :286,525MJ(10MJ/m²x78.5m²x365)

メタン1トン

  • 体積: 1397m³、一般家庭の都市ガス消費量(340m³)の4.1軒分
  • 発熱量: 55,500MJ、一般家庭のエネルギー消費量(38,358MJ)の1.5軒分
  • 市場価格:57,250円
  • 牛: 13頭分(ゲップ等、年間)


関連資料


新潟県上越市沖の海底にメタンハイドレートの気泡を発見(松本2007)

2006年9月、独立行政法人海洋研究開発機構の調査船「なつしま」搭載の無人探査機「ハイパードルフィン」(注4)を使って潜航調査を行った。その結果、(1) 海底の複数の小さな孔から大量のメタンガスが噴出していること、(2) 噴出したメタンの気泡が噴出口から数10cm上昇するうちに白いメタンハイドレート皮膜に覆われ、あるいは球状のメタンハイドレートに変わってゆく様子を確認した。(3) 噴出孔周辺には大規模なバクテリアマット等の化学合成生物群集(注5)が見られ、ベニズワイガニやカイメン類を優占種とした生物群集が存在することも明らかになった。

日本海東縁におけるガスハイドレート鉱床の 集積と崩壊 (松本2008)

水深900m の海底に確認されたメタンプルームは高さ 600m にも達するが、海底での発生源は、見逃してしまいそうに小さなシープであり、一カ所からのフラックスは径 5mm ほどのメタン気泡を毎秒 10-30 個放出する程度である。この程度の気泡群が海水に溶け込む事なく浅海域まで 600-700m も立ち上がる事は大変不思議であるが、その秘密は低水温の日本海固有水にある。無人探査機の観察で、湧出したメタンの気泡が高圧低温の固有水の中でガスハイドレートに変わり、ガスハイドレート・バブルとして水柱を上昇していることを視認した。このようにして、海底湧出メタンが定常的に浅海域~大気に移動している。

日本海東縁,上越海盆の高メタンフラックス域におけるメタンハイドレートの成長と崩壊(松本2009)

  • メタンプルームの分布には定向配列は 認められず直径 300 ~ 400 m の領域内に不規則 に分散する。
  • ビデオ映像によると,海底面から湧 出する瞬間は明らかに気体である。海底面の小さ な孔から頭を出し,変形しながら大きくなり,一 定の大きさになると球状バブルとなって離脱・浮 上する。この間数秒である。これらバブルを,離 脱・浮上から 2 ~ 3 秒後,海底から数 10 cm の 高さで捕集したときにはバブルはすべて固いメタ ンハイドレート皮膜に覆われていた。


Widespread methane leakage' from ocean floor off US coast (BBC A. Skarke2014) 

As to the energy potential of these new seeping sources, Prof Skarke is fairly pessimistic. "There is no evidence to say that these clathrates are related to conventional gas reservoirs, so there is no evidence to say they are a recoverable resource."

オホーツク海網走沖のガス湧出域におけるROV調査と湧出ガス量の見積 もり(北見工業大学2018)

  • 200×100mの範囲内に、20か所程度のガス湧出地点が確認され,各地点での湧出口は1か所の場 合や複数の湧出口が密集している場合などさまざま
  • 5m程度の湧出口密集範囲での1年間の湧出量は170,000m³程度と算定され、ガス価に換算すると400万円程
  • 全体での湧出量は1,000,000m³,ガス価で2500万円程度

(1,000,000/22.4x16.04/1000=716トン/200×100m)

日本海東縁、上越沖のメタンプルームによるメタン運搬量見積もりの検証 (松本・青山2020)

  • 年間モル数までは検証作業によっても間違いはないことが確かめられたが、年間モル数をメタンの重さ(質量)に換算する際の計算ミスにより、1つのプルームの年間運搬量としてメタン2000トン〜4000トンという誤った数字を示した。正しくは年間運搬量1.6~2.6トンと1000分の1以下である。
  •  メタンバブルを直接捕集する方法により、…湧出量見積もりを行なったが、得られた湧出量は年間1〜9トン程度であった。
  •  ただしここでいうメタンプルームとは直径 2 m 高さ 600 m の仮想的なプルーム(青山・松本, 2009)である。魚群探知機で観測される自然界のプルームは複数のメタンシープからのバブルを集めている可能性があり,この点については今後の検討が待たれる。
  • 音響探査画面に出現するメタンプルームは,強いメタン湧出活動や,表層型メタンハイドレートの存在を示唆し,海洋メタンハイドレートの探査では重要な観測対象であるが,本稿で明らかにしたようにメタンプルームによるメタン運搬量は,1 年間で小さなハイドレートブロック 1 つ程度である。

参考「青山千春博士のトンデモ研究」